H2O √after and another Complete Story Edition【枕】【エロゲ】
今回はエロゲ話題です。
少し古い作品ですが、「枕」による「H2O √after and another Complete Story Edition」について書きたいと思います。
タイトルが長めなので、以降は「H2O√aaaCSE」と表記します。
※基本ネタバレはありません
20.H2O √after and another Complete Story Edition
この「H2O√aaaCSE」は「枕」の処女作「H2O-FOOTPRINTS IN THE SAND-」とその続編「√after and another」を合わせた完全版となっています。
あらすじは以下の通りです。
奇病を患い目の見えない主人公『弘瀬琢磨』。
彼は父親の仕事の都合で、田舎にある叔父の家に預けられることになる。
預けられた家近くの学校に通うことになった彼は、そこで三人の少女に出会う。
隣の席にいる『小日向はやみ』、
村長の孫娘で学級委員長の『神楽ひなた』、
そして彼以外その存在には気が付かないが、 一人でいる彼に抱きついてくる少女・『音羽』。
他にもいじめっ子の『田端ゆい』、女装をしている美少年『八雲はまじ』など、新しい出会いを経験しながら、
彼は自身の「目が見えない」という孤独を克服し、
また、みんなと仲良くなろうとするが……。
(げっちゅ屋紹介文より引用)
「枕」と聞くと「ケロQ」を思い出し、「ケロQ」と聞くと「終ノ空」や「素晴らしき日々~不連続存在~」を思い出す方も多いのではないでしょうか。
この「H2O√aaaCSE」もその例に漏れず、ただのほんわかした日常系エロゲとは異なります。
いじめが出てきたり、中々に重い内容を含みます。
話は変わりますが、「ケロQ」「枕」は僕が一番大好きなブランドです。
「すばひび」と「サクラノ詩」に魅せられて以降、大ファンとなりました。
そのため、「枕」の処女作となった「H2O」もプレイしてみたいと思い、今作に挑戦したわけです。
「ケロQ」「枕」の作品には他にはあまり見られない特徴?があると思うのです。
それは「考察ゲー」という様相を呈するという点です。
今までの記事でも何度か書いてきたのですが、エロゲの中には、シナリオをメインとした「シナリオゲー」、キャラをメインとした「キャラゲー」の他に、作品に込められたテーマを読み解くことをメインとした「考察ゲー」があると個人的に思っています。
前述の「すばひび」「サクラノ詩」に加え、伝説?のエロゲ「さよならを教えて~comment te dire adieu~」もその典型例です。
※同人レベルでは半年ほど前にそれに近いものに出会えたのですが、商業作品ではこういうジャンルはほとんどないように思われます…
※ちなみに同人レベルで出会えたその作品(「コトノ葉カナタ」というのですが)については、以前の紹介記事で書いていますので、そちらもよろしくどうぞ。
シナリオを楽しむことそれ自体がメインなのではなく、そこに込められた作者(ライター)のテーマを読み解くことが醍醐味となっているということです。
例えば「すばひび」や「サクラノ詩」ならウィトゲンシュタイン哲学を主軸とした「幸福」「生の意味」を、「さよならを教えて」なら主人公の狂気から彼の「情況」を読み解くのがメインだと思います。
※「さよならを教えて」については以前の記事で考察を書いています。
話を戻しますと、今回紹介する「H2O」も立派な「考察ゲー」です。
↓公式サイトはこちら
H2O √after and another Complete Story Edition
(目次の下の画像をクリックしていただいても飛べます)
ちなみにこの作品はかなり前にアニメ化もされています。
その結末はアニメオリジナルで賛否両論あるものとなっていますが、当時の話題にはなったと思います。
アニメもPC版もOP・ED共に良曲揃いだということも「ケロQ」「枕」の特徴の1つですね。
monetさんの透き通るような歌声が冴えわたります。
特にOPは僕も大好きです。
本来であれば、この作品も僕なりの感想・考察を書きたいところですが、そうなるとかなり長くなるのでただの紹介にしたいと思います。
というのも、今月末(6/24)にはケロQ枕のライブがあるのです!
僕はコミケ91にて、死ぬような思いで何とかライブチケットを手に入れました!
そのライブで演奏される曲がケロQ枕の作品の楽曲なのですが、僕はケロQ枕の作品は「すばひび」と「サクラノ詩」しかやったことなかったので、それまでに残り2作品をやるつもりでした。
その残り2作品というのが、今回紹介する「H2O」と、現在プレイしている「向日葵の教会と長い夏休み」です。
というわけで、比較的短い期間で「ひまなつ」をやり切ってしまわなければならないので、長々と考察を書くのは控えて、今回は紹介のみに留めたいと思います。
タイトルの「H2O」というのは、「水(water)」ではなく、Hを頭文字に持つヒロイン2人と、Oを頭文字に持つヒロイン1人を指します。
そして、こちらがHを冠する1人「小日向はやみ」です。
彼女は主人公の隣の席なのですが、何故か村ぐるみでいじめられています。
主人公がその理由を尋ねても、はやみは悪い子だからとしか返ってきません。
それでも主人公は、みんなと仲良くしたいという思いを捨てきれません。
はやみとも、クラスのみんなとも仲良くしようと努めます。
共通ルートというか前半部分ではほとんどはやみとの問題を主軸に話が進んでいきます。
すばひびほどではありませんが、やはりいじめを含みますので、萌えるエロゲを期待するのは間違いですね(--;)
でもでも!所々でほんわかする場面もあるので、一応エロゲの体裁は保たれてます。
いじめられていますが、はやみは弱い子ではありません。
「私の友達」という題の作文でも、「私には友達は必要ありません」なんて宣言しちゃうほどです。
だからこそ主人公はなぜはやみがいじめられるのかますます疑問に思うわけです。
目の不自由な自分には優しくしてくれるクラスメイトも、はやみにだけは優しくありません。
続いては、Hを冠するもう1人のヒロイン「神楽ひなた」です。
主人公が越してきた沢衣村の村長の孫娘であり、クラス委員長も務める彼女は、人当たりもよく目の不自由な主人公にも誰よりも優しくしてくれます。
その優しさは主人公も認めるところなのですが、ひなたも例外ではなく、はやみをいじめる側です。
ひなたが直接手を下すことはありませんが、「はやみちゃんは悪い子だから」と言い続けます。
はやみとも仲良くしたい主人公は、なんでこんなに優しいひなたまでもがはやみを悪い子だと思うのか分からなくなります。
当然ですよね(´・ω・`)
だがしかし、そもそも主人公はなんでそこまで全員と仲良くなりたいと思うのでしょう?
クラスにいじめがあったとしても、いじめる側にはならないとしても大半はそれを傍観する側に回り(悲しい事実ですが…)、より大多数と仲良くすることを選ぶはずです。
まぁ、そこには主人公の隠された過去があったわけですが…
主人公の過去についてはネタバレを多分に含みますので、多くを語ることはもちろん避けます。
ですが、言える限りだけ言わせてください。
主人公の目が不自由なのは物語開始時点からそうなのですが、彼も生まれつきそうだったわけではありません。
彼は原因不明の奇病で、見えるときと見えないときがありました。つまり視力が安定しませんでした。
そのため主人公の母は、頻りに幼き主人公に色を教えます。
空の青、雲の白、夏草の緑…
主人公は母を心配させないために必死にそれに応えます。
母が自分の病気のことで悲しんでることを子供ながらに分かっていたため、作り笑いをしてでも母を悲しませないように努めました。
ここで最後のヒロイン、Oを冠する「音羽」が重要になってきます。
音羽は、主人公にだけ見える存在です。
時の音の精霊と自称していますが、その存在は謎に包まれています。
先述の通り、主人公はいじめられているはやみとも、いじめているクラスの皆とも仲良くしようと努めますが、それはやはり困難を伴いました。
その度に彼は、自分にだけ見える音羽に励まされます。
彼女は彼を常に肯定してくれました。
このヒロインのルートは最後に固定されるので、真ヒロインともいえます。
そのためその存在についてはネタバレを含みますので、これ以上のことは避けます…
(まぁ、結構早い段階でその正体には気づくのですが…)
以上の3ヒロインが「H2O-FOOTPRINTS IN THE SAND-」までのヒロインです。
最初に書きましたが、この作品は2つの作品を合わせた完全版です。
そのため、続編である「√after and another」にも当然新規ヒロインがいるわけです。
上の彼女がその新規ヒロインの1人「田端ゆい」です。
あらすじにもありましたが、彼女ははやみをいじめているグループの中心人物です。
いじめてる側がヒロイン!?とか思われそうですが、そこはまぁ上手くつじつま合ってますので心配はないですね。
彼女の田端家は村の名家であるため、村ぐるみでのいじめにも当然積極的に関わることを要求されます。
そこを掘り下げていくのが彼女のルートになるわけですが…
「√after and another」の新規ヒロインのルートはちょっとした特徴がありましてですね…
今までの3人のヒロインはどのルートもそれほど違いはないのですが、新規ヒロインのルートはちょっと特殊性が強いのです。
ネタバレになるので詳しくはもちろん避けるんですが、彼女のルートに入ったとたん、主人公が2人!?みたいな状況に陥ります笑
主人公が2人とはいっても、ドッペルゲンガーだとかそういう意味不明な話ではなく…突然、別人物の一人称視点による話が展開されるというだけです。
公式サイトでも一応の存在は明示されていますのでネタバレにはならないと思いますが、その人物というのは、ゆいの兄「田端晃一」です。
その晃一がこれまたカッコよくてですねぇ(興奮)!まさにエロゲの主人公やで!って感じです。
枕の作品でいうと、サクラノ詩の「草薙直哉(くさなぎ なおや)」、すばひびの「悠木皆守(ゆうき ともさね)」に近いですね。(後者のほうが近いかな?)
そして別人物視点ということはもちろんヒロインも変わりまして…
それがこの「稲垣雪那」です。
通称「せっつな~」です(*´ω`*)
彼女の熱狂的なファンも多いようです。袴っ娘萌え~。
公式サイトでも一応の存在は示されていますので、隠しヒロインというわけではありませんが、出てくるのはゆいルートのみですし、結ばれるのも当然主人公とではなく晃一とです。
ゆいルートでは「主人公とゆい」だけでなく、「晃一と雪那」という2つの軸で楽しめます。
そして、もう1人の新規ヒロインがこちらの「八雲はまじ」です。
えぇとこの子は実は女の子ではなく、女装男子、いわゆる「男の娘」です…
そんなヒロイン(いやヒーローか?)を攻略するの!?と思われそうですが、主人公とのHシーンはありませんのでノーマルな方でもご安心頂けます。
というのも、他のいわゆる男の娘ヒロインと違って、心まで女の子というわけではないからです。
彼には彼で、女装をしている理由があるというわけですね。
ですので一応のHシーンはありますが、それはあくまでクリア後のオマケシナリオでして、お相手も主人公ではなく友人の女の子です。
ぱっと見、女の子どうしのHシーンですが、ちゃんとモノは生えてます…
このヒロインのルートは最も特殊といってもいいかもしれません。
何せルートに入るとすぐに数年の月日が流れ、話の舞台が変わるんですから…
ネタバレにはならないと思いますが、この舞台というのが、まさしくサクラノ詩の「弓張学園」でして…
それだけではなくなんと!立ち絵付きで「草薙直哉」「夏目圭」「鳥谷真琴」「柊ノノ未」が登場するんです!!
サクラノ詩をやった人ならば興奮間違いなしです。
キャラデザに多少の違いはありますが、直哉と圭とノノ未に関してはほとんどそのままです。
唯一、鳥谷だけは何故か超絶ウザキャラになっていましたが…
とまぁ、こんな風にかなりイレギュラーな展開になっております。
「千年桜」ならぬ「二千年桜」なるものも登場しますしね。
このヒロインのルートではありませんが、とあるルートには「御桜稟」と「氷川里奈」も出てきます~
※サクラノ詩未プレイの方には意味わからないですよね…ごめんなさい…
そしてはまじの妹である、こちらの「八雲雪路」が加わり、主人公とはまじと雪路の3人の間でシナリオが展開されます。
このルートはファンタジー要素も含みますが、ネタバレになりそうなのでこれ以上は言いません。
ちなみに雪路にはHシーンありませんので、あしからず…
最後に1つだけ…
この作品ではある英詩が引用されています。
それは作者不詳「Footorints in the Sand(砂浜に残る足跡)」という詩です。
そうです。タイトルにもなっているやつですね。
以下にその訳を書いておきます(原文もあるにはあるのですが、本編では書かれないので省きます)。
ある男の人が、夢を見た。
夢の中で彼は砂浜にいて、神様と一緒に歩いていた。
砂浜には、彼と神様の足跡が残っていた。
空のスクリーンに、彼の人生が映し出された。彼の赤ん坊の頃から、今までのことが。
彼の楽しかったこと、うれしかったこと、面白かったことが映し出されて。
その全ての時に、砂浜には、二つの足跡が残っていた。
ひとつは彼の、そしてもうひとつは神様の。
続いて、彼の悲しかったこと、苦しかったこと、辛かったことが映し出されて。その時にも、やっぱり砂浜には足跡が二つあった。彼と神様の足跡が。
そして、最後。彼がどうしようもなく辛かったこと、悲しすぎて泣き出してしまったこと、苦しすぎて耐えられなかったことが映し出された。
その時、砂浜には足跡が、ひとつしかなかった。
男の人は、横を歩く神様に聞いた。
「神様。……あなたはいつも私の側にいると言ってくださいました。そして、私の側にいてくれました。私がうれしかった時、楽しかった時、辛かった時、悲しかった時、全ての時にあなたは私と一緒にいてくれました。それなのに、どうして?どうして私がどうしようもなく辛くて悲しくて泣き出してしまった時には、一番側にいてほしかった時には……あなたは私の側にいてくれなかったのですか?……私を見捨てたのですか?」
そうしたら、神様はこう言った。
「私の大事な大事な子供よ。私はお前のことをとても大切に思っている。……私はいつもお前の側にいる。お前がどうしようもなく辛くて悲しくて泣き出してしまった時、私はお前を背負って歩いていたんだ。」
こうした「人と共に在る神」というのはしばしばケロQ枕作品で描かれるテーマですよね。
すばひびでは、生という観点から「人と共に在る神」を、サクラノ詩では、芸術という観点から「人と共に在る美(=神)」を描いていたようにも取れますし。
順番的には今作のほうがすばひび・サクラノ詩より古いので、もしかしたらこの考えをすばひびとサクラノ詩に落とし込んだのかもしれませんね。
では、今回の紹介はここら辺で終わりにしたいと思います。
総括すると「H2O√aaaCSE」は…
・枕の処女作とその続編を合わせた完全版
・考察に値するテーマを持っている
・主題歌や各エンディングも魅力的
・いじめも扱っている少し重めのシナリオゲー
・すばひびやサクラノ詩にも通じるテーマを持っている
といった感じです。
それでは、また逢う日まで…
(追記)
次回は「向日葵の教会と長い夏休み」について書きたいと思います。(もしかしたら『論考』のことかも?)